俺の部屋に着いてすぐ、彼女は鞄から雑誌を取り出した。俺はプリンの蓋を開けながらチラっと横目で見たけど、今はプリンだと思った。


「ねぇ、どっちが可愛い?」


俺がプリンを食べていると、弾む声で話しかけてきた。

俺に見える様にテーブルに雑誌を広げ、彼女もプリンの蓋を開けた。

プリンを口に運びながら、コートを二つ指差した。


「どっちもピンクか…」


ピンクが好きな彼女が迷っていたのは、どちらもピンク色をしていて、俺から見たら正直どちらも同じだと思い思わず笑ってしまう。


「何で笑うのっ!ピンク可愛いでしょ?」

「まぁ、お前ピンク好きだしな?…こっちかな。」


唇を尖らせる彼女の頭を、“ごめん、ごめん”と撫でて、フード付きの方を提案した。

君はピンクが似合うから、どっちでもいいと思うんだけど、選ばなきゃ機嫌を損ねてしまう。


「あ、やっぱり?私もそっちが可愛いかなぁって思ってたんだぁ!」


俺の意見は正しかったらしく、プラスチックのスプーンを握りしめて嬉しそうに言った彼女。


「じゃあ、最初からこっち選べよ。」

「彼氏の好みに合わせたい乙女心を解ってよ!」


そう言った俺にまた唇を尖らせ、俺の頭を叩いた。


「いて…」


折角正解を選んだのに、彼女の機嫌を損ねたようだ。


「で、そっち買うの?」

「へ?買わないよ?」

「買わないのに俺叩かれたのっ?」

「そうなるねぇ。」


からっぽになったプリンのカップをビニール袋に入れながら、ヘラッと笑ってそう言った彼女。


「叩かれ損だし。」

「はい、どーぞ?」


今度は俺が唇を尖らせてみら、彼女はその唇にクッキーを押し当ててきた。


「美味しいよ。」


黙ってクッキーを見つめる俺に、ニッコリ笑ってそう言った君。

そうゆう問題じゃないんだけどな…と思いながらもクッキーをかじった。


「知ってるし、いつも食ってんだから。」

「シナモンの味がいいよねぇ〜。幸せ〜。」


俺がクッキーを食べると、彼女もニコニコ笑いながらクッキーを食べた。

やっぱり、その笑顔が可愛いと思うんだけど、絶対言ってあげない。