「えっ・・・。」

 彼の後姿を見ながらふと思う。

 「親父に似てるな・・・。」

 私の大嫌いな親父は、本当は優しい人間だった。
 帰ってくるといつも私のところに来て、「ただいま!」と言って頭をなでた。
 あの大きな手が、あの暖かい手が。今でも覚えているんだ。

 
 捺斗。あなたが私に、大切なものを思い出させてくれたよね?あなたの大きな手が、あなたの暖かい手が、大好きだったんだよ?


 私は、入学式にも参加せずに、一人屋上でサボっていた。
 
 【キーーー】
 
 屋上の扉が開いた。特に気にもせず、私は青い空を見ていた。
 
 【ツンツン】
 
 肩をつつかれて、振り向くとそこには、彼がいた。
 
 「やっぱりお前だ。」
 「え?」
 「髪型で、大体は分かったけど・・・。」
 「なんか、用でも?」
 「入学式でねえの?」
 「うん。」
 「そっか・・・。」

 何なのだろう、この微妙な空気は。

 「おい!!ナツ!」
 扉の方から声がした。
 「あ、ヒオ。」
 彼は、ヒオというやつと、話していた。

 「っか、ナツ。先コウが探してたぞ!」
 「おいそれ早く言えよ!」
 「ってか、逃げねと。」
 「おう!」

 「おい。」
 急に、私に話を振られ・・・。

 「行くぞ!!!」
 手を握られ・・・。