音楽室がある
4階までの階段を
駆け足でのぼる。
「実莉!新しい先生だって!」
「山村先生みたいに、優しくてしっかりした先生がいいね!」
「宏子先生みたいな女の先生だったらどうしよー」
「やっぱり男の先生がいいね」
長い階段をのぼりきり、
音楽室までの廊下を歩く。
二人はいつも、
誰よりも早く音楽室に行き、
楽器を組み立て
始まりのミーティングまでの
わずかな時間も無駄にせず
練習をする。
実莉は楽器庫から
自分のフルートをとりだし、
ピアノの近くで組み立てる。
すらっとした背丈に、
少し茶色い肩にかかる髪。
中2にしては
どこか大人びているような
落ち着きのある風貌に、
優しい印象の丸顔。
少し垂れ目で
伏し目がちにフルートを
吹く姿は
長い睫毛が際だって、
とても印象深い。
