「初めまして
年は28
専門楽器はコントラバスです
これからよろしく」
余計な事は口にしない、
少しどころか
かなり関わりにくそうな
その男性に
恐い以外の印象を
受けた生徒はいないだろう。
実莉はポカンとしながら
新しく自分達を
支えてくれる事になる先生を
つま先から、
頭のてっぺんまで
ゆっくり見上げる。
細身の割に、
広い肩幅が大人の男性を
思わせる。
スタイルが良いのに、
だらしなく着こなすスーツを
少し残念に思いながら、
顔に目を向ける。
すっととおった鼻筋に、
切れ長の目。
一見やぼったい
少しパーマがかった
長くて黒い髪だが、
何故かオシャレに見える。
ふと目を見ると、
視線があった。
表情をピクリとも
かえない先生と、
照れ屋な実莉は
目があった事への驚きと、
どこか
不思議なオーラを放つ先生に
ドキッとし
すぐに目を
そむけてしまう。
そんな空気を察するかのように
宏子先生が口を開く。
