いつかの花。


 思わず、ハッと身構えた。

 ……知っているのだろうか?

 いや、そんあことはないだろうけれど、とりあえず、いきなり自分の父のもとに現れて養女となった不審人物、くらいには思われているだろう。

 確実に。



「……それこそ、下手な冗談ですね」


「ふふ、頭の回転も悪くないね。男だったら喜んで家庭教師でも何でもしてあげたのに」



 満足そうに笑ったツツミさん。

 侮れない人だ。

 そして同時に、掴めない人だ。



 まるで、頭から冷水をブッかけられたように、身体が強張っていた。

 けれど、それを態度に出しはしない。



 ……私は、小野真人の娘なのだから。



 豪族、わかりやすく言えば貴族の娘、というものは、それ相応の教養・知識・礼儀作法・その他モロモロのことが要求される。

 民の税金を使って生活を送る以上、上に立つ者としての責任や仕事、そして、民の生活を守らなければならない。

 そうでなくては、豪族であるという資格も、税金を使って生活する資格もないのだ。

 それは、湖子の『常識講義~初級中の初級編~』の一番初めに言われたことだった。