昨日、私が教室でPRの練習をしていたあのあと、相沢くんも一緒に練習に付き合ってくれて。


相沢くんがPR文を一部考え直してくれたおかげで、私の考えたカチカチなPRじゃなくなり、みんなも聞きやすかったと思う。


練習の成果もあって噛まずにスラスラと言えたし、あの大人数を前にしてたのに、我ながらよくやったなと褒めてあげたいぐらい。


でも、やっぱりひとりじゃこんなふうにうまくやれなかったから、私は相沢くんに感謝の言葉を伝えた。


「ありがとう。相沢くんのおかげだよ」


にこっと笑うと、相沢くんは何故か「お、おう」とだけ言って、私の頭をさっきより強めにわしゃわしゃと撫でてきた。


「あ、相沢くん……髪がぐしゃぐしゃになります……」


「あ、悪い」


でも、相沢くんになでなでされるのは嬉しいなぁ。頑張ってよかった。


そうして次々に他のクラスの人たちもPRを終え、壇上から降りてきた。


「それでは最後に、文化祭実行委員長の野川さんから、開会の挨拶をお願いします」


開会式も、野川先輩の挨拶で終わり。


このあと、私たちは開会式の片付けをして、体育館を使うクラスや有志バンドたち用の準備をしてから、自分のクラスへと戻ることになっている。


これから自分たちで作り上げてきた文化祭が始まるんだと思うと、少し感慨深い気持ちになりながら、慣れた手つきでマイクの高さを調整する野川先輩を見つめた。