「きゃーっ!夏輝くーんっ!」

「かっこいい!付き合ってー!」

「セフレでもいいからぁ」

「夏輝くぅん、あたしのことぉ、覚えてるぅ?」


毎朝の光景。


自分で言うのもなんだけど、俺の顔がそこら辺の芸能人より整ってるのは分かってる。


告白なんて日常茶飯事だし、ちょっと古風だけどラブレターだって毎日大量にもらうし。


でも…違う。


俺が欲しいのはこのウザくて甲高い声じゃない。


こんなにケバイ女じゃない。



俺が欲しいのはただ一人。



それさえ手に入ればなんだって捨てられるのに。


たくさんの人気より、一人の『好き』


『好き』なんて言ってもらったらもう死んでもいい。
(いや、死んだらダメだけど。)






でも。


それは叶うことはないから。



『男』として見られるんじゃなくて『近所の友達』でいい。


そりゃ、異性として見られたらいいんだけど…陽歌にはその気はないって百も承知なわけだし。



「はぁ…」




今日2度目の溜息をついて、鉛のように重い足を動かす。


向かう先はいつも同じ。