…――――

「あーあぁぁぁぁ」

「奈々、何やってんの?」

「あ、美弥ちゃーん…」


机に突っ伏す私に、呆れた顔をしている田中美弥(たなか みや)が声をかけてきた。

しかし、絶望感に浸る私にはもはやそんな事はどうでもいい。


「やってしまった…」

「なにが?」

「隣のクラスのさ」

「うん」

「倉木 優(くらき ゆう)って奴居るじゃん」

「うん」

「付き合うことになった」

「うん。……はい?」

「あぁぁぁぁぁ」


再び机に突っ伏す。

これは絶望せずにはいられませんよ。
生きてて最初の彼氏がオタク野郎ですよ。これが嘆かずにいられますか!


「あんた、何やってんのよ…」

「間違えて告白してしまった…」

「間違えって、馬鹿?」

「それを言うな美弥さん」


あの後、一緒に帰ったのだが、私には理解できない言語が次々と現れた。
どうやら向こうは私もオタクだと思っているらしい。

あ り え ま せ ん

今更断る訳にはいかない。なんせ私から告白してしまったのだから。

絶望感から抜け出せないでいると、ガラガラの教室に誰か入ってきた。


「は、早見さん、一緒に帰りません?」

「倉木、くん…」


そこには、迎えに来たらしい倉木が居た。眼鏡にきっちりシャツを入れた姿は、オタクにしか見えない。


「美弥、先に帰るね」

「え、あ、うん」


さすがに本人の目の前で嘆く訳にはいかないので、私は手っ取り早く鞄を持って早足で教室を出た。