高二の秋、君とであった。





―――朝比奈あゆ。高校二年生。
派手系と暗い系に別れろなんて言われたら派手系。

そんな自分には欲しいものがありすぎた。
雑誌ばかり見てる性か、欲がたまってたまって、小遣いだけじゃ
足りなくなってる。


そんな訳で、バイトを始めた。
あゆのバイトはごく普通の居酒屋だった。

自給もそんなに高くない。

でも、髪は茶色、化粧もしていて、高校生。
そんな自分を雇ってくれる店は少なかった。



最初はそれが不思議でたまらなかった。
髪が茶色で、化粧をしていて、派手なだけなのに。

あゆみたいな人、雇ってる店は沢山あるのに。



でも、今の居酒屋でバイトしてなかったらあゆは
本当に間違った人生を歩んでた。

何も知らない、“楽”という言葉しか知らない人間になってた。





バイトは何時も7時から10時まで。
そんなに長くないのかな。

バイトするのは初めてなあゆ。
どれくらいが普通か、全然分からなかった。



一ヶ月にあゆの財布に入ってくるお金は二万円から三万円くらいだった。
それだけで上等だったからバイトは掛け持ちしてなかった。

もともと、掛け持ちするくらいバイトする気はなかったから。





「あゆちゃん、もっと愛想よくお願いね。」



何時も同じ事ばかり言ってる広田さん(店長)の奥さん。
広田さんには馴染めたけど、奥さんには馴染めなかった。



…しょうがないじゃん。
来る人、皆おじさんばっかなんだし。


むさくて気持ち悪い。