涙が止まらない。
本当はずっと前から気付いてた。そんなこと言われなくても知ってた。
お母さんが私より男の人を選んだこと。
悠くんと私はもうどこかで会うことすらないこと。
凛ちゃんは私の全然知らないところで幸せに暮らすこと。
他の約束も、全部、ちゃんと気付いてた。
でも、現実を受け止めるのが怖くて。
何かを求めて、進んで、拒絶されるのが怖くて。
またいつか、の約束に頼れば傷付かないから。叶わなくても、いつかに期限なんてないから。
そうやって逃げるしかなかった。
「なっちゃん。本当はどうしたいの?」
「ッ…」
「夏乃」
強く、優しくひーくんが私を名前で呼ぶ。

