BEST FRIEND

このまま喧嘩になったら、いくら相手が酔ってるとはいえ夏海でも力の差で勝てない。
ハルが逃げようと促す為に夏海の腕を引っ張ると、夏海はスーっと大きく息を吸い込んだ。
「痴漢ですよー!この男が女子高生に痴漢しましたー!」
大声を上げる夏海の声にようやく通行人達も立ち止まり、一斉に男を見る。
「お、おい、お前…!」
男が夏海を止める為に足を踏み出した時、背後から腕を掴まれる。
「お話よろしいですか?」
夏海の声と、ハル達を取り囲む通行人達に気付いて警官がやって来た。
「てめぇ、覚えてろよ!」
警官に連行されながら男は捨て台詞を吐き闇の中に消えた。あの様子じゃ酔いも覚めただろう。
とにかく助かった。あのまま誰も助けてくれなかったらどうなってたか分からない。