桃色の小さな花が咲き誇る春。
百合ヶ丘高等女学園も校門から校舎まで桜並木が続き、学園の桜も多くの生徒を送り出し迎えて来た。約五十年、ここに咲き誇る桜達はずっと生徒達を見て来たのだ。
そんな桜を、藤堂 ハル(とうどう はる)は見上げる。
「綺麗だな」
この学園に入学して桜を見るのはこれで二度目。去年と変わらず桜は綺麗で、可憐に咲いている。
入学式の日にこの桜を見た時、ハルはその美しさに感動し、これからこの学園で起こる様々な事を想像し胸を高まらせた。
想像通りとは行かないが学園での生活は毎日楽しくて、親友と呼べる友達にも巡り会えた。
そして、大切な想いにも気付かせてくれた。
「ハルーおはよー」
「冬馬、おはよ」
元気に駆けて来たのは親友の暁 冬馬(あかつき とうま)。