「あの子の面倒を見るのは大変でしょう」
私はチヅルさんに答える代わりに肩をすくめてみせた。
チヅルさんは微笑んで、目の前のバラ園に目を向けた。
「バラ、お好きなんですか?」
「ええ、大好きよ」
私もバラ園に目を向ける。
私が落ちてきたところだけ、添え木がしてあった。
きっと、あの後シキが手入れしたんだろう。
「あの、すみません。
私、ここへ来た時にバラを数本折ってしまいました」
「フフ。
それは仕方ないわ。だって、急なことだったんだもの。
それに、シキがちゃんと直してくれてある」
そう言って、チヅルさんはふらつく足で立ち上がった。
私は急いでチヅルさんの背中を支えてあげた。
「本当はね、私は花なんてあまり好きじゃなかったの」
「え?」
私が眉を上げると、チヅルさんは困ったように肩をすくめた。
「あの人、バラが大好きでね」
私が首を傾げると
「好きなヒトの“好きなもの”には、誰だって興味を持つでしょう?」
チヅルさんは、少し照れたように頬を染めた。
ルカの
お父さんのこと……?


