館の玄関を出て、庭へと続く長い階段を下りた。
「しっかし、マジで広いな、この庭」
庭の中心には噴水があり、その周りに白いベンチが並べられている。
庭中色とりどりの花が植えられ、暖かい日差しに誘われた蝶々が優雅に羽を動かしていた。
私も、花の甘い匂いに導かれフラフラと足を進めた。
その時――。
噴水の向こうに、何やら人影が見えた。
水しぶきを避けるように顔を横にずらすと、はっきりと、その人影を確認することができた。
車いすに座る、ひとりの女性。
私は、ゆっくりとその女性に近づいた。
「ルカは、今日も魔界へ行きましたか?」
突然女性に声をかけられ、私はなぜか体をビシっと伸ばして立ち止まった。
女性がゆっくりと振り返る。
……おばあさんだ。
でも、どことなく
ルカに似ていた。


