「変な夢?」


梓が首を傾げる。


「どんな?」


「それが、あんま覚えてないんだけどさ……。
なんか、こう、暗闇の中にいんだよ。
んで、何かと闘ってて、守んなきゃいけないものがあって……
最初はイライラしていたはずなのに、なんか段々と胸んとこがあったかくなってきて」


幸せ。

だったような気がする。


私が夢を思い出しながら言葉を並べると、梓は


「ふーん」


と、細かく何度か頷いた。



「ところでさ」


梓には、私の夢の話なんてあまり興味がなかったらしく。


「マンガ、全部読んだの?」


目を輝かせて聞いてきた。


「あ、ああ。
うん。もちろん読んだよ」


そう言って、教室に入りながら梓に紙袋を渡した。