「ヘイリの心は、痛いほどによく見えるんだ。
本当はとても心優しくて、相手の事を思いやれる子なんだよ」
ただ……
と、フランさんは言葉を続けた。
「その表現が、他の悪魔とは少し違うだけで」
ヘイリには、ヘイリの心の傷があった。
ルカには、ルカの心の傷があった。
どっちが深い傷なのか。
そんなの、どっちも同じくらい深い傷なんだ。
「ルカ。
おまえを世継ぎに選んだのは、人間の血が流れるおまえは、きっと人間を大切にする国に変えてくれると思ったからだ。
しかし、一番の理由はそこではない」
「………」
「私が、おまえのことをよく知らないからだ」
「………」
「見てみたかったんだよ。
おまえが魔界で過ごしていく姿を。
成長するおまえを。
今まで見てこれなかったぶん、これからのおまえを」
フランさん……
「この選択は簡単ではなかった。
兄のヘイリには、弟が世継ぎなんて屈辱的だっただろう。
しかし、それでお互いがお互いを刺激し合い、よく変わっていけばと思ったんだよ」
父、フランさんの
息子たちを想う心。
ルカやヘイリと同じように
不器用だった。


