-side 翔-

「まじかよ…」


麻柚の涙声が頭から離れない。

いつかあるとは思ってた。

けど、やっぱりショックで仕方がない。

けど仕方ねぇよなぁ…

主演ドラマっていうから見る気だったのに。

見れるかな…

ドラマ。


「翔~!!いやっほー!!」


その時おちゃらけた声が聞こえた。

「香代子かよ…」

麻柚が良かった…

「なにようその顔は。麻柚が良かった。みたいな顔しちゃって。せっかく会いに来てあげたんだから。」

「あたりめぇだろ…」

「あら?あら?あらら?なに落ち込んでるわけ?」

「…別に」

「あ~冷たい。麻柚ちゃんのドラマのこと?」

「!?」

「あ~やっぱり。キスシーンのことでしょ。」

な…

何なんだ・・・

こいつは。。。

ズバズバ当てやがって。


「図星みたいね。」

静かにうなずいた。


「仕方ないわよ。女優なんだし、今は売れてるからね。
それにこんなんじゃあんたたちやってけないわよ?」

「…」

「麻柚ちゃんの方が辛いと思うわよ?
麻柚ちゃんはあんた以外に興味ないのに興味ないやつとキスするわけだし、
全国に放送されるわけだし、
何より…あんたに振られるのとかすごく怖がってると思うわよ?
言うの、すごく勇気がいるんだと思う。」


「…」

「で?あんたは?うじうじしてるの?
よわっちい男ねぇ~。もっと頑張りなさいよ。」


確かに…

その通り。

今回は香代子に助けられたかも…。


「ありがとよ。…なんで香代子は来たわけ?」