「悠由もなんてーか人が好いっていうか…」


「え?」


顎に手を当て考え込む杏子。

これでもかというほどに首を捻り、そんな彼女の顔を覗き込む。


「だってさー久々のデートがそんなことになっちゃって、怒ったり落ち込んだりするどころかアンタ、喜んじゃってんじゃない」


「だって…」


「てかもー人が好いってかあほね」


あほって!!

さっきばかって言ったぁ!


がーんがーんがーん…とショックを受けるあたしを無視して、杏子は先を行ってしまった。


「……きょーこなんてきらいよ」


聞こえないくらい小さくつぶやいた。


「なんか言った」


……つもりだった。


「言ってない!」


声を高くして返しながら杏子に近寄るあたしは、そのとき。

これから起こる…というか起こされる…というかぶっちゃけ先輩に引っ掻き回されることになろうとは、思いもしてなかった。