『? せんぱぁい』
もし今目の前に悠由がいれば、顔の前でひらひらと手を振っているだろう。
『ねーねーねー』
そして今度はじゃれる子猫のようにまとわりついて…。
『ねーえったらぁ』
挙句ぴょんっと首にしがみつき、可愛らしく顔を覗き込む。
そのときは考え事をしているときが多いけれど、悠由のその一連の仕草が好きだったりする。
『もー先輩っ』
「あ? ああ…」
いい加減痺れを切らした声にハッと我に返る。
…まあ、本人たちの間でちゃんといいようになったって言うし…。
いざとなれば杏子だか美紅ちゃんだかのどっちかがなんとかするだろ。
近くにいないってのは色々アレだな…。
互いの虫よけが。
俺は悠由のあほと違ってそれなりの自覚はある。
妙に女に付きまとわれるっつー自覚…。
「……今度、来いよ」
『えっ……』
切ろうとする悠由にそう、一言だけ言い、先にブツッと切った。
どーせ…「今度って……いつ!!」…などと一人で叫んでるだろうな。