「………という訳。」


嫌々ながらも説明する。
稚世を見れば、憤ったように恐ろしい表情でプルプルと震えていた。

「―――っ、全く! 何回ヤラれたら気が済むのよあいつら!! 水陽君も水陽君よ! 何で妹がそんなケガを自分のせいで負ってるってのに、謝罪の一つも無い訳!? あーっ、ムカつく!! 怒鳴り込みにいってやる!」


稚世は一気にまくし立てると、そのまま足音激しく水陽のクラスへ向かって消えた。


(………、まぁ、仕方ないんだよね)



私達は仲が良い訳じゃないし。


知香子が居て、やっと普通の兄妹ってところだ。



その知香子だって、所詮は幼なじみなのであって……いつも私達を取り持ってくれる程暇じゃない。


(……きっと、私じゃなくて、知香子がアイツと兄妹だったら、)
――皆幸せだったのかな。



机に伏せたまま、どんよりと曇った空を見上げ、私はそんな事をぐるぐると考えていた。