「……あいつ、父さん達に、何か言われたみたいなんだ。」



――ヒヤリと頭が反応する。

あの時。

何も言わず、ただ押し黙る雛乃が、何を思っていたか。今なら簡単に想像がついた。



『お前はもう、此処へ帰ってくるな』



父さんが、言った。

あの時、雛乃は。





「―――っ!」


何故か、沸々と内から嫌な感情が沸いて来て――堪らず、その場から逃げ出した。

自分は悪くない、その思いは変わらない筈なのに、何故だか後悔すら押し寄せて。



(―――ッ、クソ…)






オレは、ただ、知香子に迷惑をかけたくなくて、ただ、それだけで…――


喧嘩を繰り返す雛乃が疎ましくて、それで――――



あぁ、何でこんなに?

オレは、ただ、――――