(……別に、あんなヤツ、帰って来なくたって、――)



「お兄ちゃん! ヒナが、帰れないって……、聞かないの…っ!」



姉貴の、今にも泣き出しそうな声が、耳に響く。

心配そうに外を見つめる水哉アニキは、姉貴を宥めながら、苦虫を噛み潰したような顔で押し黙る。


……もう、ウンザリだった。
何度も問題ばかり起こす妹に振り回される、自分の家族。

あいつのせいで、この家が凍りついて壊れてしまいそうな勢いだ。

だったら、あんな妹、要らなかったのに。




「――オレが、ヒナを迎えに行くから。」


沈黙の中手を挙げたのは、水浪アニキ。

チャリ、と音を立てながらバイクのキーを手に取り、大雨の中出ていこうとする。