兄ちゃん姉ちゃんの好意は、私を表側に留めているストッパーみたいなものだ。


もし、彼らが居なければ、私はとっくに荒れ果てていただろうから。


でも。




「……ね、知香子。私ね、父さんに、母さんに、"帰って来るな"って、言われちゃったんだ。」


ぽつりぽつりと雨が降り始めた。


夏の天気は変わりやすい。遠くでする雷の音も響き出す。

直ぐに本降りになった雨は、傷を濡らして、瞳から流れる涙さえも隠すのだ。


「なんで……っ、なんで私なの…? もう、私は、あそこへ帰れない…!!」



力の抜けた身体は、重力に従って、下へ崩れ落ちる。


抜かるんだ砂の、ドシャリという音がやけに大きく響く。