ふと,志之居君の耳から伸びる黒い線に気付いた。 よく聞くとかなりの音量らしく,5,6個の机が離れた場所からでもほんのわずかだが聞こえるような気がする。 とりあえずこんこん,と机を指先で叩く。 「? あ,早瀬さん」 イヤホンを外すと、あまり耳にしない音楽がなかなか普通に聞こえてくる。 「ゴメンね。邪魔しちゃって」 「いや,一応これは校則違反でしょ?」 イヤホンのコードをポケットに突っ込みながら志之居君が言った。