「おい歩夢、くだらねーことしてないでさっさとしろよ」



大江歩夢の後ろから聞こえてきた声。


あたしはその声を聞いて、すぐにパソコンで部屋を確認するとリモコンとマイクを小さなカゴに入れて差し出した。


さっさとしろよ、だって。

ウルサイやつ。





「105号室になります」


「ありがと!」



大江歩夢はまた二カッと笑顔を見せると、慣れたように部屋に向かって行く。



「夏美ちゃん、いってきまーす!」



そしたら次は、あ…この人名前なんだっけ…テツ…オ?だっけな。


なんとなくしか思い出せずにいたあたしの前を、手を振りながらテツオは歩いていく。



「チッ」


そしてその時。

目の前で聞こえたその音をあたしは聞き逃さなかった。




「ちょっとアンタ!」


「なんだよ」



カウンター越しに呼び止めたあたしに、面倒くさそうに返事をする清原大雅。



「今舌打ちしたでしょ」


「してねーけど?」



いや、してましたけど?完全に!



「可愛いとか言われて喜んでんじゃねーぞ、あいつ女いるから」



はっ?



「だっ、誰が喜んでのよ、喜ぶわけないでしょ?」


「ふーん…」



清原大雅はそう言うと、フッと笑って。



「ま、バイト頑張ってね〜チャン夏美」


そそくさと部屋に向かって行った。



は!?

チャン夏美?



バカじゃない?


超ムカつくんだけど!!!