そしてその日。
「相原さん、ごめん今日受付入ってもらえる?」
学校終わりのカラオケのバイト。
受付にいた綾部さんが、そう言って手招きであたしを呼んだ。
「えっ、でもあたし、まだ一回しか受付入ったことないんですけど。それも、最初の日に店長に軽く教わった程度で…」
そう言って戸惑いながら歩いていくと、綾部さんは笑って言う。
「大丈夫だって、レジもバーコード打てば自動で精算になるし、お金入れたら釣銭は勝手に出てくるから」
「えっ、でも…受付はホール業務がちゃんとこなせるようになってからって店長言ってましたよ?」
「まぁ…そうなんだけどさ。サトミいるじゃん?あいつ今日1時間位遅刻するらしくてさ」
サトミさん…
あ、綾部さんの彼女なんだよね。
たしか。
遅刻…
「で、俺5時から厨房じゃん?受付にサトミ入る予定だったけど多分あいつ6時頃になるみたいなんだ」
…つまり?
「人手が足んないんだよ…ごめん!店長には内緒で!ホールはベテラン西田が入ってくれるからさ」
えっ…ベテラン西田さんがいるなら西田さんでいいじゃん受付。
…と思ったけれど。
そっか、西田さん…
「ごめんな、西田人と話すの苦手だからさ」
そうだった。
対面恐怖症だっけ?
何か言ってた、店長が。
それにスタッフ同士の中でも、西田さんは超静かで、いつも影が薄いんだよね。



