『お母さん、ちょっと出かけてくるから。これで今日のお昼ご飯買いに行きなさい。それから…お父さんの言うこと、ちゃんと聞くのよ』
あれは確か俺がまだ小学校一年生で。
とても寒い冬の朝だった。
いつものように朝食を食べていた時。
そんな言葉を、幼い俺達に残して出て行った母親。
あの女は…
俺と、まだ四歳だった妹に千円札を一枚渡すと、何の前触れもなく出て行った。
そしてそのまま…
あの女は、帰ってこなかった。
待っても待っても。
泣いても震えても…帰ってこなかった。
もう思い出したくもない思い出。
そしてあの日以来…
俺はとにかく女という女がみんな嫌になった。
いつか母親になるはず、そんな女どもを信じられなくなった。
あの女は…
俺達家族を捨てただけじゃなくて。
そんな女性不信の俺を、見事に完成させた人。
最低な、最悪なそんな母親だった。



