「夏美?」 ぼーっとしていたあたしの顔を、春ちゃんが隣から除きこんだ。 「あ、ごめん。なんだっけ?」 「今思い出してたんでしょ、先輩のこと」 「あっ……ううん、ぼーっとしちゃってただけだよ」 あたしがそう言うと、春ちゃんはそっか、と頷いて。 それ以上は何も言ってこなかった。 永瀬先輩…か。 ダメダメ。 思い出しちゃ。 気持ちを切り替えて、あたしは春ちゃんの腕に自分の腕を絡ませて。 「いこっ!授業始まっちゃう」 そして、他愛ない話をしながら教室へと戻った。