「今日夏美バイトだよね?」
「うん、バイトー。っていうかさ、西田さんっていう大学生の人の話したじゃん?」
「あっ、人と話すのが苦手な人だっけ?」
「そうー!その西田さんがさ、この間もね」
下校時間。
駐輪場から自転車を押しながら、あたしは春ちゃんと歩いていた。
今日は清原の顔は見ていない。
ずっと教室にいたし、あまり校内を歩くこともなかったから見かけることもなかった。
「団体客の部屋が苦手だからーとか言ってさ、掃除してるあたしに持って行ってとか言ってきて」
だけど校門を通り過ぎようとした時、春ちゃんと話しながら一回だけ後ろを振り返った。
「で、夏美が持って行ったんだ?」
「うん、心の中でお前が持って行けー!って叫びながらね」
でも、あいつの姿はどこにも見あたらなくて。
もう帰ったのかな。
まだ教室かな。
って何考えてんのあたし。
顔を合わせたくなかったはずなのに、無意識のうちに振り返ってあいつのことを探してしまっていた自分にひどく驚いた。



