「あ、全然もう大丈夫です。もう忘れちゃいましたから」
明るくアッサリそう言うと、先輩はホッとしたような表情を浮かべた。
「そっか…良かった…でも本当にごめんな」
「だから大丈夫ですって!じゃ、バイト中なんで」
笑いながらそう言って、先輩の横を通り過ぎた。
だけど、キュッと締め付けるような胸の痛み。
本当は忘れてなんかない。
だって、初めてだったんだ。
キスをしたのも、体を預けたのも、全てが初めての人だった。
メールひとつで喜んだ。
電話の声だけで満たされた。
抱きしめられた時は、本当に本当に幸せだと思った。
初めての痛みより、好きな人と繋がれたんだと思えたことの方が大きかった。
だから…傷付いた傷跡はものすごく深かった。
泣いて泣いて泣いて。
泣きまくって、また泣いて。
毎日悲しいとか、苦しいとか。
そんなことばかりを思った日々だった。
大丈夫なんかじゃない。
忘れられるわけない。
人生においての大事なものを捧げた人なんだ。
ねぇ、先輩。
ずるいよ。今さら謝られても、また辛くなるだけだよ。
あのまま、ずっと言葉を交わすことがないままの方がよかった。
会いたくなんてなかった。
せっかく歩きだせてたんだ。
やっと、前を向いて歩いてるんだよ?あたし。



