うそ…
「なっちゃん!久しぶり」
うそでしょ…どうして…
そこに立っていたのは、永瀬先輩だった。
ひどく動揺してしまったあたしは、何も言葉を返すことはできなくて。
トレーを持つ手からも、力が抜けていく。
「なに、知り合い?」
先輩の隣にいた男の人がキョトンとした顔でそう聞いた。
「おー、あ、お前先入ってて」
「お、了解」
目の前で交わされる会話。
そして部屋に入っていく男の人を見届けると、先輩はまた口を開いた。
「バイトしてたんだ?ここで」
ダメだ。
普通にしなきゃ…まだ引きずって気にしてるなんて思われたくない。
「はいっ」
あたしは今、うまく笑えているんだろうか。
精一杯、笑顔を作って答えたけど、あまり自信はなかった。
「つーか元気そうで良かったよ」
えっ?
「いや、ずっとさ、気になってたんだ。俺、あの時ひどいことしちゃったな、って」
「……」
返す言葉が見つからない。
その言葉の意味が、あたしにはよく分からなかったから。
「若かったんだ、あの頃は。だから傷つけてしまったこと、ずっと引っかかっててさ」
今さらそんなこと言われても。
だから何なんだって思う。
「本当ごめん!」
だけど、頭を深々と下げられて。
何かもう、恨みとかそういうのがバカバカしくなった。
正直、別にどうでもいいって思った。
あたしはもうちゃんと前を向いてる。
もう…大丈夫なんだ。



