「何してんの」



自転車をとめて、傘を閉じた。




「えっ…あ…雨にビビッて超必死でペダル漕いでたら、チェーン外れちゃったみたいで」



驚いた顔をしながらも、彼女はしゃがみこんだまま外れたらしいチェーンの方を
指差した。




「春ちゃん、だっけ?」


「えっ?あっ、そうですけど」



俺がそう聞くと、彼女は何だかちょっと警戒したような顔をした。



「ハハハッ、別に何もしねーって。どれ?直せるかは分かんないけど見るだけ見てやるよ」



しゃがみこんだ俺は、わりと慣れた手付きで自転車を触る。



そういや、よく若菜が自転車のチェーン外れたとか言って泣いて帰ってきてたよな…

そんなことをふと思い出した。




あ、これならいけるかも。


ちょっと錆びたチェーンに、グッと力を入れる。



「あっ、手…汚れ…」


彼女はそう言いかけて。


「すいません、汚れちゃいましたね…」



申し訳なさそうに謝った。