「ねぇ、お願い!お願いだから着て!」





「やだ、絶対やだ、もう前回が最後って言ったじゃん。」





「ラストチャンス!ね?ななちゃんお願い!」





もうなんでこうなったのーっ!





…さかのぼること一時間前。彼の家で借りてきた映画を一緒に見ていただけだったのに。





見始めて三十分も経ってないのに彼は急に立ち上がると寝室へ。





「…え、ちょっとどうしたの?」





「ななちゃん少し待っててね!!」





そう言い残した彼を待つためしょうがなく見ていた映画を止める。





すると彼が寝室から紙袋を持って私の前へ。なんだかこの笑顔、嫌な予感がする。





「ななちゃん!これ着て?」





そう言って彼が紙袋の中から取り出したものはメイド服だった。





はあ?ちょっと待って。確かに彼は顔はいいのに中身が少し残念なオタクってのは知っているけれども。





もっと言うなら彼にコスプレして欲しいと頼まれたのは別に今回が初めてってわけではないけどさ。





なんでこのタイミングで?





「この映画つまんなくてななちゃんの顔見てたらこれ買ったこと思いだして!」




とっても素敵な笑顔でとっても残念なことを熱く語りだした彼。





いや、何言われてももうコスプレには付き合わないって言ったよね?熱く語られてもちっとも心に響きませんけど?





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