「やだね。」


アイツは妖艶にニヤリと笑う。


「は、早くどいてよ!」


もがけばもがくほど、強く押さえつけられ、アイツがどんどん迫ってくる。


距離はもう、アイツの髪がかさるほど……。


「俺の本名をここまで笑ったのお前ぐらいだぞ。」


「ほ、本名!?」


“山田太郎”って偽名なのかと思ってた……。


「とにかく、あの名前は嫌いだから呼ぶな。絶対にだ。」


アイツが真剣な瞳でそう言ったとき、心臓が大きく跳ねた。


こんな俺様な発言なのに、イライラするのに、…ドキドキする。