―――――――
――――


自宅へと向かう車の中、俺は後部座席に疲れた体を預け、考え事をしていた。


あぁ!!


ムシャクシャしてどうしようもない。


あんな女ごときのことなのに。


俺はつい、セットされている髪をぐしゃぐしゃにした。


「おい、拓真どうした?」


車中に落ち着いた低い声が響く。


視線を上に向けると、運転している池田マネージャーがルームミラーでちらりと俺を見た。


ミラーの中では、華奢なインテリ風の眼鏡がキラリと暗い中で光っている。


俺は大きくため息を吐いた。


「……あの女のことですよ……。」