【実來Side】


夜の街中を全速力で走り抜ける。


景色は早い速度で流れ、体が冷たい夜風をきっていく。


目の前には必死に走る広いアイツの背中。


そして、冷たい風になんか負けないアイツのあったかい大きな手。


頭の中はまだぐちゃぐちゃで、躓きそうになりながら、あたしはアイツに手を引かれるままついていくことで精一杯だった――。


ようやく滑り込むように暗い路地裏に入ると、急に地べたに座り込むアイツ。


アイツは肩で息をつきながら、雑に頭にかぶったブレザーを取り払う。


露わになった頭は、間違いなく“山田太郎”のものではなく、“神崎拓真”の時のもの……。


酸素のいきわたらない混乱だらけの頭の中で、思考を懸命に巡らせる。


――あれって、現実だったんだ――。


「……ねぇ、何で……?……何で、アンタはあたしを……?」


……何で、アンタはあたしを助けてくれたの――?