俺は漫画のあるシーンをさっと開いて、アイツの目にうつす。


「このシーンな。」


ニヤリと笑いながらアイツの肩を掴んで立たせれば、読み込んでるアイツはすぐに理解したのか顔を真っ赤にして、体をビクンと跳ねさせる。


「ちょちょちょちょっと!!そんなのしなくていいから!」


「騒ぐなよ。この俺の演技の邪魔をするな。」


俺は冷たくコイツを一瞥し、演技に入るため集中を始めた。


今から俺は一之瀬連。そしてコイツはヒロインの花菜。

ヒロインには似ても似つかないコイツだが、そう思い込む。


俺は瞳を閉じ、そしてパッと開けた――。


「……俺、花菜のこと前から気になってたんだ――。」


目の前にある揺れる瞳を見つめ、抑えきれずにギュッと抱き寄せた。


そして少し腕をゆるめて腕の中のコイツを見下ろせば、アイツはリンゴみたいに赤くなってオロオロしている。


コイツやっぱ反応面白すぎ。