映画の初主演が決まれば、あの親父も少しは……。


「……そうだったんだ……。」


俺はアイツの沈んだ声を耳にしながら、調理室の窓に切り取られた一面雲のどこかわびしい空を見つめた。


「でもさぁ――。」


アイツがまたポツリと呟く。


「何だよ?」


「アンタに、蓮様ができんのぉ?」


無駄に釣り上がった語尾と、アイツの悪戯な笑み。


このシチュエーションでよくそういうことが言えるよな……!!


コイツ、俺を怒らせる才能だけはあるみたいだな――!


「この神崎拓真に不可能があると思うのか?いいだろう、ワンシーン演じてやる。」


あんなのを言ったこと、後悔させてくれる――!