門限9時の領収書


「あはは、だよな、だよなー! ぜってー黒を基調としてシンプルな〜って定番じゃん?

それか逆にくたびれたワンルームマンションで素朴な感じに評価が上がったー、みたいな」

結局どこに住んでようが、イケメンなら好感度がアップするのだと爆笑。

そして話はイケメンと言う単語は一時期死語だったのではないか――というくだらない論争。

笑う度にコップの中でオレンジジュースが揺れるから、幸せを目で確認できるし、

こんなしょうもない会話が何より楽しくて、爆笑する度に好きになって良かったと思う。


笑顔がある関係は、きっと抱き合う関係より尊い気がした。

なんて、洋平も思春期なのだから普通に欲求不満な部分がない訳ではなく、ばりばり嘘っぱちなのだけれど、

粋なパフォーマンスが彼の中でマイブームである為、

本音は隠して、紳士らしくシンプルに強がって結んでおこう。


校長先生ばりにもう一度言うので、聞き逃してはならない。

笑顔がある関係は、きっと抱き合う関係より尊い気がした――これで完璧、洋平の好感度アップに違いない。



「分かるーほんと分かる、謎ーあるある先入観すぎ。

実際のお金持ちのインテリア事情は知らないけどさー、私そゆーのよりこっちのが好き。あはは。だって可愛いもん」


「、……」

燃え立つのは灼熱の太陽ではなく洋平の恋心。恋愛細胞が皮膚を赤く染めてしまう。

無自覚に彼氏をときめかせるのは狡い。反則だ。


――インテリアに凝りまくって黒で部屋を纏めれば良かった。

そうすれば、色白の彼女の存在がきっと引き立つから――……


真っ白な人が存在する為にある幸せな世界を作りたい。

――今回はわざと? 本心?

どちらなのだろうか。
後者は美し過ぎて洋平らしくないので、ユニークな彼らしく、ここは前者にしておこう。

わざと臭いことを言ってみた。
……そういうことにしておこう。