からかう為に、「可愛い可愛い可愛ーい」と、適当に(本心を)言えば、

同じように『ずるいずるいずるーい』と、騒ぐ。

黙れと三回唱えようとした時、興奮させたら寝るのが遅れるからやめてくれと、母親にきつく注意された。


 ……。

ここでいちいち反論しないのは、母親をベストにあしらうスキルをありがちな中二の反抗期で習得したからだ。

思春期の時は、ある程度客観視できるようになり、人として両親の言動が気になるから、

(父親が自分よりガキだとか、母親が大人になりきれていないとか)、

自分より足りない二人にそれなりに反発した。


だが、彼の場合グレたり怒鳴ったり無視をしたりの中学生らしい必殺技とは違い、

家族と心の距離をとっておきながら、表面的には穏やかに接するという裏技を用いていたらしい。

つまり、逆ギレというよりは、社会を見据える目がついたのだと(奇妙なことを)思っていたようだ。


けれども、しばらくすると両親を不満に思うことは、自分が甘ちゃんだということを知ったんだとか。


そう、反抗期は親はこうあるべきという理想を押し付けて、

それと違うから彼らに不満を露わにしていたのだと結論付けたらしい。

言い換えるなら認められない弱さと同様。

……全く恥ずかしい。
反抗期はカッコイイのではなくカッコ悪い、いや可愛らしい。

けれどもそれは必然、成長するステップなのだと知った。


ほら、こんな感じで人生を説こうとする洋平は、なかなか痛い高校生。

そうやって学生らしくすることは、今しかできないので彼はわざと青さを堪能するタイプだ。

そして何事にも一知半解であることから、自分の意志に責任は持たない。