もう高校二年生だから当然かと、こちらを見る寄り目がちな母親の視線が痛みを伴った種類に変わる。
(父親に似たら幼い頃、中心目のコンプレックスもいくらか和らいだろうに。
しかし結衣は自分が離れ目だから洋平の近距離目が好きなのだそう。
単純な彼はコンプレックスが嫌いではなくなった。
恋愛の神様は本当に人間を上手く操るものだと感心してしまう)
さりげなく顔を掻くふりをして こちらに探りを入れる鋭い眼力から逃れ、
「同じ学校、同い年、性格は普通ー」と、ほとんどの女子に該当するであろう短い説明をした。
目力に重みがあるなら、それは今きっと百キロだ。
息子の恋人歓迎モードのようで、そうでないようで……?
それもこれも過去の自分の責任だ。
当たり前だが、昔が今に繋がる――だから未来が楽しいように、今の言動に背筋を伸ばさなければならない。
そう、明日の採点は昨日までの毎日が作るのだから、自堕落に生きるなんて勿体ないじゃないか。
『いいねー若い。今度は大事にしなさいよ』
母親はタオルの山を手の平で三回叩いてから、意味ありげに じっとりとした瞳の光線を絡ませるから居心地が悪い。
、……。
…………。
今度とは、前があったと言うこと。
プラズマTVから流れるのは、リラクゼーション的なゆるやかなメロディーと、
ベテランアロマセラピストのような柔らかい音色をした指示。



