これは洋平による経験からの持論。
思春期になると交際相手・彼女の存在を家族に隠すより、

正直に打ち明けた方が何かと楽だし、後々自分の為になったりする。


ケーブルTVのヨガ番組を眺め、流れ作業をしていた母親は、

『やだーやるわねーそぉーおめでと。 やだー……お母さん寂し、嬉しいー、やだー今日? はー、洋がねー……へぇー』

――立ち話に盛り上がる主婦のようにはしゃぎ、

振り返ったその表情は、たちまち“女子高生だった頃”に若返る。


例えば後ろ頭の辺りに薔薇が咲き乱れる感じ、金色のオーラを放つ感じ……

――こちらからすれば照れ臭い感じ。


母親にとって息子は永遠の恋人とか勝手なことを言い、

子離れ出来ずに彼女やお嫁さんに嫉妬するタイプもあるらしいが、

うちの両親は弟にゾッコンなようで(小二のクソガキ)、

さほど洋平には依存していない為、そのような心配は必要なさそうだ。


「やー、……んとー、ほら、ホワイトデー? かな」

お花屋さんで彼女に花束を選んでいると、店員さんに誰にあげるのか尋ねられ、

恋人のイメージに合う花を相談しているみたいだ。

……ブーケなど贈ったことはないのだけれど、とにかく羞恥心を身をもって痛感する瞬間。