くたくたに伸びたハーフパンツと一昨年モノのTシャツを抱え、

(パジャマをいつから着なくなったのかは謎)、

一階のリビングで洗濯物を畳んでいる母親の後ろ姿を眺めてから、一体いくら経っただろう。

夕飯の片付け、とうに食器洗い機がピカピカに磨きあげてくれているはずだ。


  ……。

我が親ながら何を考えているのかよく分からないが、

血縁とはいえ他者である以上、不明な点があるのは当然だろう。

また年齢だって違うのだから、全てを理解するにはまだ子供なのだろう。

そう、親の中で洋平は永遠に子。すなわち分かることができないのかもしれない。

だから人間は知りたいと思い密に関わるのだろう。


――なんて、どんな思想家気取りなのやら。

これが洋平が最近気に入っている趣味の一つ。あれこれ考えるスタイルを愉しむこと。



 ……。

お風呂に入る前、言わなくてはならないことがある。

こんなに照れ臭いと妙に胸騒ぎがして、なかなか開口できないなんて……


カーペッドの上に積み木を重ねるのは遊戯、フローリングの上に服を重ねるのは家事。


洋平は軽く咳ばらいをしてから、勇気を振り絞り言った。


「……なあー、あの、さ。母さん、……俺ー、うん、カノジョ出来たり。した。り。」

お風呂に入るから、たまたまリビングを通りかかったていで、母親に打ち明けた。

田上結衣という愛くるしい彼女が居ることを。


  ……はあ、

母の日にこっそり晩ご飯を用意するくらい反応が怖くて、それでいて楽しみで、

こちらを見る人は喜びか落胆か。