門限9時の領収書


  かわいーな……

色気ゼロのお喋りをする結衣の肌は白くて、ホッペの下が少し膨らんでいて――

 なんか……

  、柔らかそ

(女子がキモいと引くであろう)やらしい意味ではなく、

ホッペをピっと軽く吸ってみたいと付き合う前から思っていた。

赤ちゃんのホッペをぷにぷに突きたいカジュアルな感じ。
そのくらい可愛い。


隣で同じおかずの詰まったお弁当を食べる少女を見るだけで心臓が暴れるから、

駆け足で脈を打つ体は狂ったのではと不安になる。

触れたくなる衝動、手を伸ばせば触れられる距離。

彼氏の権利は五つある――――と、博識に欠ける洋平は厚かましいことを思っている。


一つ目は彼女を愛する権利。
二つ目は彼女の隣を歩く権利。
三つ目は彼女に触れられる権利。
四つ目は彼女に愛される権利。


そして五つ目は……



 、かわい……

撫でるように細い指をなぞってみたいし、柔らかそうな髪を思いっきり掻き交ぜてみたいし、

人差し指を引っ掻けて一気にネクタイを緩めてみたいし、洗濯したばっかのシーツの上に転がせてみたいし、

――いいや、単純に甘えた声で好きだと言われてみたい。


なんだかフォローできない域まで痛い妄想しちゃうのことが、健気な男子高生という職業病のようだ。

それが当世風なのだから、彼だけがキツイ訳ではないので、

くれぐれも呆れずに(軽蔑せずに)、

逆に少年らしくて可愛いと、母性をくすぐられるポイントになれば幸いなのだけれど。