ガラス窓の向こうから注がれるのは、夏を先取りした光。
今のところは風の通りが良い場所で大丈夫だが、本格的に暑くなったらどこで食べようかと迷う。
クーラーが使用できる教室で食べるなら問題ないのだけれど――
正直に言おう。
本当は教室や中庭、食堂で食べて注目を浴びても構わない。
むしろ自分の彼女はこんなに可愛いのだと自慢したい。
なんだかんだ単純にこうして彼女と二人きりになりたいからで、独占したいからで。
……なかなか結衣に執着しているのが洋平。
(しつこくなるが一生懸命な彼に引いてはならない。ここは『愛され彼女なんて羨ましいわね』の線でいこう)
可愛い
……美味しい
グルメではないから不明なのだが、結衣は比較的料理上手な方だと思う。
……むしろ期待していなかったから意外と家庭的だと評価が上がった。
たかがお弁当ごときで。
でも結衣は野菜を上手に――――と、栄養面の分析から人間性について飛躍させデジャヴュ並に洋平がくどく語りかねないので、
とりあえず強制終了させ、お話はランチタイムのカップル観察へと進ませよう。
「見たー? 嫁が代わってた」
「子供も。あのポニーテールが笑えたのにな?」
「あとデニムの股上が」
趣味が合うので会話のポイントがそのまま笑いに重なる。
自分の性別が女に変わったら彼女そのままな気がする洋平だ。
まさかこんなにしっくりする人に出会えるだなんて思わなかった。
それは付き合い初めの浮かれテンションの影響なだけで、
たいして意味がないことなのだろうか。
それでも幸せでしかない。
結衣と恋人になる為だったなら、約三ヶ月前の学年末テストの出来がイマイチだったことへの後悔はない。



