門限9時の領収書


メインと呼ぶのだろうか、お肉の料理は一つでいい。

(魚料理も。焼き魚があるのに豚の角煮、煮魚があるのに牛時雨……なんだか変なのだけど、お肉とお魚は別にして欲しいワガママぶり。

もちろん出されたら洋平は食べるのだけれど)


主役を二つガツガツ並べられたら、びっくりする。

他は野菜でいい。あんまりお肉を多様されると非常に困る。

前の彼女は家庭的アピールがしたかったのか、しょっちゅうお弁当を作ってくれたのだけれど、

ミートボールにハムチーズ、ミニトマトにベーコンと目玉焼き、ウインナーがセットだったり、

からあげにエビフライ、肉巻きポテトにジャーマンポテトがセットだったり……

ありがたいけれど微妙と思ってしまったダメな洋平。


その辺、今の彼女とはひどく合致するのがありがたかった。

豚の生姜焼きにからあげが添えられたら彼女もギョっとするし、

ミートソーススパゲティーにハンバーグがあてがわれていたら彼女もビクっとする。

多分、凄く面倒くさいこだわりなんだと自覚していたから、共感してくれて嬉しかった。


だから、だ。
むやみやたらに迫れない。
男ってだけで愛を渇望できない。


「……。」

卵料理をやたら振る舞われてもコレステロールが、

野菜とは言えポテトサラダは炭水化物だし、とうもろこしは糖分があるし。

こんな思考になったのは、小学生の時に家庭科が大好きだったせいかもしれない。

(……それさえ母親の影響なのだろうが)


今でも授業で習った時計みたいな六つの栄養表が頭に浮かぶ。

そう、洋平は机系より実践系の授業が大好きだった。

体育、図工、家庭科、美術、技術、音楽、この手の成績はたいていクラスで一番だった。

だからどうしたと言われても、何もないのだけれど。