例えばの話。
彩りだけに囚われて栄養無視だったり、逆に味にこだわって見た目は代わり映えしなかったり。
少し前には絵本を開いたようなキャラ弁たるものが流行っていた。
洋平たちが園に通っていた頃は、お弁当に凝る家の子は過保護だとからかわれていたが、今は違うのだろうか。
運動会やお遊戯会等イベントの日だけが特別なお弁当だったのに、最近は違うのだろうか。
なんだか逐一パパママの愛が手厚くて羨ましいような、少し過剰だと疑問に思うような……
そうやって自分たちの頃と今の子を比べても、
環境や時代が違うので、無意味だと分かっているのだけれど。
……洋平も生意気に歳をとったのだろうか。
「おばちゃんが料理関係とかハードル高いー」と、少し元気なく話す結衣が、
右側に首を傾けたので、髪の毛が遅れて零れた。
「やー、正直年齢的に田上さんのがありがたい」
ヨイショではなく本心を告げた。
確かに栄養士の母親と実家住まいの女子高生ならば、明らかに前者の方が味もバランスも良い。
しかし職業病のせいか母親は栄養面に厳しく、
毎週水曜日以外は和食で、――しかもほとんど魚料理しか作らない為、
長い目で見ると、ヘルシーなメニューが良いのだが、
まだ十六歳、がっつり味が濃いものをお腹に溜めたい年齢。
とはいえ、お子様ランチのような類い――ハンバーグやオムライス、からあげで単純に喜ぶレベルとは違う。
カロリーが気になってしまう、なんとも面倒臭い男が洋平だったりする。
欝陶しいと呆れるのはまだ早い、男子は何か一つくらいこだわりマイ論があったりするんだとか。
美味しい
上手、お嫁さんにしたい、とか
幸せを食べている気分になれるから手料理は好きだ。



