なので、カッコつけたがりぃな洋平は、中学のあの一本のことは誰にも言ったことがない。
それは高校生の格言・禁煙してます並に、『中学の時に吸ったんだ』と切り出すことで、
頭髪検査に引っ掛かったアピール並に武勇伝の語りにしたいのだと思われ兼ねないからだ。
従って、彼はこの先一生ノースモーキングノンアルコール。
とはいえ、成人したならお酒は友人との雰囲気の範囲内では飲むし、
社会人の付き合いで飲まなきゃならない場合は空気を読んで楽しく飲むつもりだ。
ただ人様に迷惑をかけるような悪酔いはしたくない。
(ちなみに洋平は空気を読むという言葉はあまり好きではない。
理由はそのフレーズ自体がオシャレではないから)
昔は悪かった自己報告ほど 、恥ずかしいことはない。
だから一本のタバコも一杯のお酒も秘密。
今よりも精神的に甘ちゃんだったのだろうと微笑ましく思う。
そんな(?どんな)洋平が黒染めをしたきっかけは、彼女と付き合うようになってから……
無理にカッコつけなくていいのだと分かったからだ。
というよりも、ありのままを好きになってもらいたいと思うようになったからかもしれない。
センス良く着飾ることと無理をして着飾ることは違うのだと……変化。
だから、謎……
惚れられた理由が正直よく分からない。
世間一般、十代の女子高生といえばワルに憧れる傾向が強いと聞くのだが、
(インテリ派好きの方は気分を害したなら謝るが、これはステレオタイプに考えた場合の話なので、今回は問題児モテ説を貫く)、
あいにく自分にはその手の愛されセールスポイントがない為、
やはり結衣に好かれた経緯は謎でしかない。
……なんて女心が分からないと、ちゃっかり不器用なピュアさを演出するあたり、
なんとも計算高い洋平だ。



