門限9時の領収書


正直に言おう、中学の時にクラスメートに流され一本だけ煙草を吸った。

ドキドキした割に、口に含んだ苦味を知って笑えた。

もちろんこれが甘ちゃんなのかと自分に笑えたのだ。

興味本位カッコつける為に手を出した自分がめちゃくちゃ恥ずかしかった。


もしも あのまま愚かな自己演出に嵌まって続けていたらと思うとゾっとする。

煙草を買うお金は中学生の分際でどこから仕入れる――バレるスリル?、タブーを犯す俺?、大人の仲間入り?

ちゃんちゃら恥ずかしくなった。

あの日から、あれは少なくとも法律を破って中高生が吸うものではないと勝手に思っている。

中高でぷかぷかしちゃう男に、洋平は一ミリも憧れない。

なぜなら、未成年と言うだけで人に迷惑をかけることを知らないのはいかがなものかという疑問がなくもないからだ。

煙草を売ったお店、世話になっている両親、学校の先生……

“裏切る俺カッコイイ”みたいなのが最高にダサいと知った。



教室という世界では、なぜか制服を着ている頃は、規則を破る人がイケているとされ、

真面目な人が尊敬される機会が少ないのだが、もう高校生――洋平としては色々と達観したいところだ。

たった一本で気付けて良かったと思う。

悪いことをしなきゃ分からないことがあることも事実。

いけないことをしたからこそ、分かることもある。

だからといって、もう二度とタバコに手を出さない。

なぜなら誰よりも格好付けたいから。


ナルシストに自分らしくある為には絶対に吸わない。

だって“タバコ吸ってかっこつけたいんだ”と大人に誤解されたくないから。

評判が下がるからリスクを避け禁煙をするなんて、立派な判断じゃないか。


……そんな感じのチープさが洋平という人間の基礎だったりする。

彼のポリシーはダサい? センスがある?

二通りの答え、どちらがよりオシャレなのか――わざわざ言及するのはあまりにナンセンスであろう。