「ムードとか関係ないし。……キス、向こうにビンタされる気がする、きもーいって笑いながら。リアル、憂鬱。はは」
現実的な予想にため息をついてから、
洋平は「フェロモンを分けて、そいから無駄に爽やかな笑みを伝授して」と雅に言った。
……自分が彼のような容姿なら、あの子はドキドキしているはずだから。
『休みん日にさ、家誘えば? したらいくらなんでも気付くんじゃないの。いくらなんでも無知な子供じゃないし』
「は、」
彼は何を言うのか。
話を聞いていないのだろうか。
どうせ期待するようなことは起こらない。
全然進展ナシ。爆笑だけ……手も触れない、絶対そうだ。
そうに決まっている。
招いておいて何もなければ、余計に凹むことになるというのに。
密室に男女二人――
……。
、…………。
本当にそうなのだろうか……
もしかすると万が一ってことがあるのではないだろうか。
『頑張れよ』とだけ笑う少年は天使の見た目の割に裏側が読めない、
なんとなく暗がりが似合うと意味不明なことを思った。
学校が似合わない――教室に馴染まない――いつも生き急いでいるような……
そう、早く卒業したがっている感じがする。……白いのに、黒くなりたがっている感じ。
けれども彼は笑っているから、実際は洋平の思い過ごしなのだろう。
彼による推理は(深く考えることが苦手なことから)あてずっぽの為。



